おフランスと言えば「シャトー」と言うくらい、日本でもおなじみの外来語として定着しているフランス語で、英語の「キャッスル」よりも馴染みが深く高貴なかほりが漂いますが、フランスには世界的に有名なベルサイユ城やロワールの城群だけでなく、知られざる名城が沢山散らばっています。
もちろん、私が住むパリ郊外にも、王室所縁の有名無名のお城が沢山ありますが、本日は5月のある週末に2日続けて出かけた4つのシャトーをご紹介します。
*週末としていますが、正確には祝日の木曜日と、フランスでPont/ポンと呼ばれる週末と挟んだ場合の連休システムで、休日となった金曜日の2日間の出来事です。
1.シャトーゴルフ場:Château de Chaussy/ショシ-城
休日最初に出かけたのは、パリ西郊外40kmほどにあるシャトーゴルフ場で日本人駐在員にも人気のゴルフ場です。
歴史は8世紀に遡る古い城ですが、王家、フランス革命など数奇の歴史を経て19世紀からアメリカ資本に移り、戦後1970年以降シャトーゴルフ場として発展してきました。
元々は「Château du Couvent/クーヴァン城」と呼ばれ現在は隣接するシャトーの名を借りて「ヴィラルソーゴルフ場」と改名されていますが、地元民にとっては地名を配したシャシー城が馴染みのある呼び方なのです。
パリ郊外に、日本人駐在員が通うシャトーゴルフ場は幾つかありますが、その中でもカントリー風な雰囲気がいいと日本人にも評判のゴルフ場となっています。
入り口側に回ってみると、ゴルフ客の車でしょう、いかにも、と言う感じでシャトーお約束のジャガーXK120が駐車していました。
エントランスで迎える石楠花も品よく
こちらがエントランスでレセプションがあります
この日は、時間がないため庭園散策に留まりましたが、館内にはバーやレストランも内設しており、ゴルフプレーとパックのランチコースなども用意されています。
シャトー伝いに庭に回ってみました。
石階段を上ったカフェテラスでもお茶などをいただけます。テラスからの眺めも抜群。
ゴルフ場のグリーンは4コース設置され、各18ホールありコースを全部回ると6km強になります。
この城は元々「Château du Villarceaux/ヴィラルソー城」の一部だったため、ゴルフ場の庭続きでそのお城へと続く入り口があります。(写真はほんの入り口部分です。)
入り口脇の小さな池で泳ぐ鴨を追って、散歩客の犬が池に飛び込みました。ヤンチャなワンコです。
実は、このゴルフ場に来る前に、ヴェクサン地方をドライブしてきたのですが、移動途中でも幾つかシャトーを見かけました。
県道途中で見かけたこちらの古いシャトーは私邸で中には入れませんでした。
こちらも道中見かけたCateau Amblevil/アンブレヴィル城。上出のヴェクサン城図にも載っています
いやはやちょっとお出かけするだけでシャトーが目に飛び込んでくるシャトー大国おフランス。
日本の神社的な頻度で登場するでしょうか。いえ、神社よりコンビニの頻度かも?
2.Château de Villarceaux/ヴィラルソー城
シャトーゴルフ場を散策後、その裏手にある御大「Château du Villarceaux/ヴィラルソー城」の無料入場券をいただいたので見学してきました。
いかにもシャトーの入り口らしい角刈りのいかつい垣根がお出迎え。
ここでもシャトーにお約束のクラシックカーが停車していました。
ルノーの戦後ポピュラー車、ルノー4CVです。ここは駐車禁止ですが大胆駐車です。
パリ北西郊外のこの辺はVexin/ヴェクサン地方と呼ばれ、かつては多くの領主が土地を支配していたため、その私邸跡のお城が多く点在する地域でもあります。
ヴェクサン地方のお城案内地図もありました。
ヴィラルソー城は、正式にはヴィラルソー領と呼ばれ、800ヘクタールの広大な敷地の中にシャトーゴルフ場を含む3つのシャトーと広大な庭園を構えています。
歴代の領主が多くの愛人を抱え領土内に住まわせたため幾つかの城、お屋敷が同領地内に点在しているのです。
どこの権力者もすることは同じですね。
13世紀に建てられたニノン城もいわば「妾御殿」沢山の愛人が住んでいたそうです。
現在は、城見学の受付として使われています。
聖二コラ塔の一角にあるお城の家庭菜園は整然と整備され、大振りのコクリコなどが美しい花を咲かせていました。
菜園を抜けると、左右対称な幾何学装飾の典型的なフランス庭園が目の前に壮大に現れました。
実は見学していた黒人の親子の5歳ぐらいの子供が、この辺りで小用をしていましたが、ここはアフリカじゃないんだからエントランスにあったトイレまで戻ってできないものか、と思いましたが口には出しませんでした。
その小用事件で気が失せたわけではないのですが、この日は別の所用があったため、この後の庭園散策とシャトー訪問はキャンセルしここでUターンしました。
実は、この城はその後、私達が所属するクラシックカークラブの招待見学があり、その時にじっくり庭園&城内見学しましたので、その時の画像を踏まえて以下にご案内します。
入り口は同じでしたが、最初にお城の屋内を巡るコースなので大きな日時計のある中庭を抜けて行きます。
庭園の脇道から、ヴィラルソー城の裏庭に到着しました。
庭園の裏庭には、小規模な幾何学庭園があり、こちらも計算された造りとなっています。
庭のあちこちに点在する彫刻はイタリアから運ばれたものだとか。
ガイドの方の案内で城内へは表玄関から入ります。
同城は1755‐1759年にかけて建てられたルネッサンス様式の城で、ところどころにルイ15世様式が取り入られています。
地上階には給仕用の賄い部屋としては豪華なダイニングがありました。
部屋の脇に手書きの中世書籍の一部が飾られていました。
タピストリーや絵画の飾られて優雅な階段を上って1階(日本の2階)へと向かうと
「レダと白鳥」っぽい彫像が出迎えました。
1階には書斎室があり
窓からは美しい庭園の景色が眺められます。
マントナン侯爵夫人の控室は、ルネッサンス様式の片鱗が見られるフェミニンなインテリア。
次いで娯楽室には年代物の家具が飾られていました。
セーブルブルーのこちらのランプも好みです。
夫人の寝室にも時代物の調度品が飾られ
当時のビデなど珍しいオブジェもありました。
お城を出て広大な庭園散策を続けます。
下の池まで下りてくると、水は澄んでいて水中の魚や藻までくっきり見えます。
最初に入城したニノン城が向かいに見えます。
先ほど訪れたお城が正面に小さく見えます。
ここからルネッサンス様式の庭園を通り抜けると
幾何学模様の大庭園の眺望が楽しめる東側へと到着です。
庭には渦巻き型の植木が整列。
そこから家庭菜園を通って出口へと向かいますが、菜園にアート作品が飾られていました。
その後は、上記でご紹介済の家庭菜園を通って聖二コラ塔から出てきました。
3.Château d‘Ecouen/エクアン城
翌日金曜日は、Pont/ポンと呼ばれる祝日が週末と挟んだ場合の連休システムで休日となったため、パリ北郊外のヴァル・ドワーズ地方に出かけてきました。
別の所用があったのですが、ついでに「Château d‘Ecouen/エクアン城」に立ち寄り見学してきました。
16世紀建立のルネッサンス様式の美城ですが、シャルル・ドゴール空港から15mという至近距離にあるため、上空を行き交う飛行機の轟音は容赦ないほどの騒音です。
美しいフランス庭園を抜けて
中庭のエントランスから入城です。
城内では古いパイプオルガンの生演奏が鳴り響いていました。
このお城はルネッサンス第1期、第2期などのルネッサンス芸術の宝庫であり、騒音は困りものの、歴史的価値の高い名城なのです。
見事な木彫りの家具も沢山ありました。
暖炉の粋を超えた芸術作品。暖炉の煤で汚したくありません。
回廊の窓からは広大なヴァル・ドワーズの土地が広がります。
このお城は以前にも来たことがあったため、この日はざっと見で立ち去りましたが、他にも以下のような素晴らしい芸術作品を観賞できます。
シャトーホテルでランチ
エクアンのさらに北にあるシャンティイ市付近には、多くのシャトーレストランが林立しています。
この日は、まだ行ったことのないレストランに、急遽予約電話を入れて行ってみました。
場所はシャンティイ近くのLa Chapelle-En-Servalという村にあるシャトーレストラン「Tiara Château Mont-Royal」
5ヘクタールの敷地を擁するシャトー全景。
昼から太陽も顔を出し快晴でした。こちらの入り口から入城です。
レストランのダイニングは数か所ありますが、この日案内されたダイニングは、暖かい感じのする落ち着いた書斎風インテリアでした。
フランスのグルメ事情は雇われシェフは良く変わるので、現在はシェフが変わっているかもしれませんが、私達がいただいた料理は少し驚きの連続でした。
まずはお口汚しにあたるブッシュ・ド・プレジール
「海老のフライ+ベトナムネムソース」
えっ?シャトーでベトナム?という意外な幕開けでした。
私のアントレ 「エスカルゴとセップきのこのパン包み」
セップは、高級きのこで秋のグルメ料理に欠かせない食材ですが、この時期の食材ではないし、癖の強いエスカルゴと合わせるとは。
おまけにパンで包み焼き。
これではセップ本来の味が活かせないのでは?と疑問に思いましたが普通に美味しかったです。
ただ、この料理では普通のマッシュルームでもよかったかもしれません。
夫のアントレ 「ラタトゥイユとアーティチョークのサラダ」
アーティチョークは朝鮮アザミのこと。
日本ではあまり馴染みありませんが、フランス特に南仏ではポピュラーな日常食材です。
ラタトゥイユの盛り付けがシャトーっぽいです。
私のメイン 「鯛のレモングラスの葉包み+温野菜の中華ソース」
いきなりこのアジアンプレゼンにびっくりしました。
レモングラスとはまたまたアジアン?タイ料理っぽいですね。
シェフがアジアに何か思い入れがあるのかもしれません。
フランス創作料理というより、中華料理フランス風と言った方が近いかもしれません。
夫のメイン 「羊肉の春巻きベトナム風味」
こちらもやっぱりアジアンです。
鮮やかな彩りや野菜使いもどこか東南アジア風配色ですね。
私のデザート 「赤いフルーツのグラタン」
東南アジア原産のホオヅキで飾られていました。
夫のデザート 「柑橘系のフルーツケーキ」
フレンチとは思えない雑さですが、これってミカン類の皮でしょうか?
食後にはコーヒー、紅茶をいただきました。
シャトーなので雰囲気とサービスは良く、ゆっくり流れる時間の中で優雅な気分でいただきました。
まさか、お城で中華風フランス料理を食べるとは思いませんでしたが、シェフなりに工夫しているようで努力を尊重します。
味は普通に美味しかったです。
現在は、純フランス料理も味わえるレストランも新設されたようで、また出かけてみたいと思います。
以上「パリ郊外シャトー尽くしの週末ドライブ」如何でしたか?
パリ郊外だけでも、週末にサクッと出かけられるシャトーが、城内見学・庭園散歩・宿泊・食事それぞれの用途で沢山散在しています。
今回は、パリ北郊外方面のシャトー関連をご紹介しましたが、北郊外方面は他にも沢山のシャトーがありますし、勿論その他の郊外にも楽しめるシャトーが沢山ありますので、またの機会にご紹介できればと思います。
拙記事でヴァーチャルなシャトー散策を楽しんでいただければ幸いです。